計算原理
Wsrの計算原理は
RCWA(Rigorous coupled-wave analysis)であり、下記(1)~(6)のプロセスを経て、フーリエ空間のMaxwell方程式(Wave Matrix)を解いている。構造がi=1~mのm層からなるとすると(1)~(6)のプロセスは各層において実施される。
(1) 電磁界vectorと格子matrixの定義
(2) 比誘電率のConvolution matrix計算とmatrixの圧縮
比誘電率分布ε
i(x,y)の離散フーリエ変換行列の内、中心から(2n+1)×(2n+1)の方形行列を抜き取り、(n+1)
2×(n+1)
2サイズのConvolution matrixを生成する。抜き取りの形状は円や菱形などに縮小でき、その分Convolution matrixのサイズも大幅に圧縮できる(wsr独自の機能)。wsrではn(Harmonics数)はhm (Harmonics数比)で、抜き取り形状はtrc(切り捨て係数)で設定される。この抜き取りはRCWA法における近似操作に外ならず、計算精度が犠牲になるので演算負荷とのバランスを考慮して決定する必要がある。抜き取りの形状が方形の場合、行列𝑷
i, 𝑸
i, 𝜴
i2, 𝑾
iのサイズは2(n+1)
2×2(n+1)
2となり、波動方程式の行列サイズは4(n+1)
2×4(n+1)
2になる。演算負荷(メモリ、CPU)は(2n)
4に比例する。
(3) 構造matrix計算
(4) 固有値問題を解く
(5) 行列の整列
回折次数を揃えるため固有値λi2の順位を入れ替えて行列を整列させる。
(6) 波動方程式を解く
光源と境界条件の種類
従来の
RCWAでは扱える光源は一様分布で解析境界も周期境界のみであったので、解析対象は反射率、透過率や回折効率の計算等に限定されていた。Wsrは分布光源が扱え、吸収境界も配備したので、解析対象はFDTD並みに広がっている。
分布光源で境界条件が周期境界条件(PBC)の場合。
分布光源で境界条件が吸収境界条件(ABC)の場合。
光源位置
従来の
RCWAでは光源位置は最上面のみであったが、Wsrではz方向の任意位置に設置できる。
光源位置が最上面の場合。
光源位置が中間面の場合。
遠方界の計算例
下図のモデルで上下面方向の遠方界が計算される。
下面側の遠方界パターン。
上面側の遠方界パターン。
光量計測
各材料の入出光量や吸収光量が個別に計測できる。
各材料領域での計測結果。
多彩な断面構造の表現例
内部定義の場合。
sub.datを使った外部定義の場合。
sub.datで記述された(x1,y1), (x2,y2), (x3,y3), (x4,y4)の4点で囲む図形が定義できる。
4点データを重ねた場合。これらの周期パターンも簡単に定義できる。
レンズ集光の計算例
内部定義による円構造の集積によりレンズ形状を表現。
外部定義による断面構造の集積によりレンズ形状を表現。
回折効率の計算
8レベルの回折格子に対する一様強度入射、周期境界条件での光強度分布。
上図のモデルに対する回折効率の波長依存性。
計算結果の表示
実行時にWscntにより強度分布をリアルタイムに表示。